こどもの心をそだてるもの


めっきり春めいてきたこの頃です。
けれども、冷たい風が吹いて、
寒さが戻ってきた今日は
雪のなかでの美しいおはなしを。

「つるにょうぼう」という絵本が、
4歳の娘のお気に入りです。

お話の内容は「つるの恩返し」と同じです。
この冬、何度か自分から「これ読んで」と持ってきました。

こんな難しい話、理解できるのかな?
と不思議に思いながらも
私も好きな絵本だし、娘が喜ぶから読んでいた。

「この子は、なかなか感性が鋭いかもしれないな」とか
「4歳にして、読解力があるのかもしれない」などと、
親バカぶりを内心、発揮しつつ読んでおりました。

読んでいると、とつぜん娘がわたしに
「これ(鶴が織った反物)3個もできてんな!」
と嬉しそうに感想を伝えてきました。

(そこが気に入ってたんか~)
鶴が自らの羽をむしってはたを織っている
ところの意味は理解していなくて、
反物がどんどんできていくことに喜びを感じていたみたい。

一瞬、拍子抜けしたけど、
そういう時、わたしは説明を加えることをしない。
もちろん、質問をしてきたら答えはするけれど。

「今、わかった!」っていう瞬間、
すごくうれしいじゃないですか。
こどもも、いずれは自ずから理解するときが来る。
その時を待ってたらいいんじゃないかと思って。

大人にもありますよね。
そういう瞬間。

例えば、大河ドラマ「いだてん 東京オリムピック噺」で
森山未來演じる落語家がおっさんになった姿を、ビートたけしが演じてる!
って分かった瞬間とか。

あれ、最初から分かりました?
わたし、放送3回目にして、やっと気がつきました。

(見てない方、すいません。何のことか全く分からないですよね~
いだてん。いろいろ言われてますが、
好きで毎週欠かさず見てるんです。

ビートたけしの噺はやっぱり聞きづらいなと
実は気になってますが。
まぁ、他は面白いので、字幕オンにして耐えてます)

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「つるにょうぼう」に戻ります。
このおはなし、和歌や俳句のように心地よいリズムがあって、
すらすらと自然に読めてしまいます。

声に出して読むと、いっそう言葉の美しさが際立つ。
物語自体は哀しいものだけど、読み進めるごとに、
心の中の澱(オリ)のようなものが
からだからスッ~と抜けていく感じ。

誰でもそういう絵本に出合うことがあります。
ただ、そう感じる絵本がひとりひとり違うんですよね。
(長くなるので、その話はまた今度。)

今は使われていないような古い言葉でも、
その世界を表現するのにかえってふさわしく思われる。
だから物語をより身近に感じられる。

その夜おそく、よ平の家の戸を、ほとほとと たたくものがあります。
この「ほとほと」という音。
現代なら「とんとん」と置き換えられますが、
胸にスッとなじみます。

「女房にしてくださいまし」たえいるような、あえかな声でした。
「あえか」は「かよわい」という意味です。
この正確な意味は、わたしも辞書で調べてはじめて分かりました。

読むたびに、受け取り方が変わる。
絵本は何にも変わっていないのに、自分の方が変わっている。

こどもに説明しなくても、
こどもは読むたびに発見があり、
そこからいろんなことを自分へ取り込んでいく。

子ども時代に、本とそういう関わり方をしていたら
きっと、物語を楽しむ土壌が心に作られます。

「3個もできてんな!」
こどもらしい、屈託のない感想。
まず、感じることがたいせつ。

物語の筋を理解していなくても、美しい語感や絵が、
知らず知らずにからだに入り、
小さい人の心はつくられていくのだろう。

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